昨日の夕方まで我が家一帯が断水の不幸に見舞われた。2日前の深夜から始まったフィレンツェ市内の断水、復旧する予定の翌朝後も、なぜか我が家は断水状態に。。。イタリア人の「のんびりさ」にイライラして、最後は諦めモード、そして拍手喝采で幕を閉じた「水なし生活40時間」を克明に報告したいと思います。
断水初日 23:00 それは突然の断水から始まる
それは予兆もなしに始まった。水が出ないのである。これはイタリアでは良くある「ご不便さ」である。イタリアに2年も住むと誰もが「やれやれまたか」という悟りの境地にたどり着く。それほどイタリアには「ご不便さ」が蔓延しているのだ。バス停に行けば場所が変更され、慌てて飛び込んだ公衆トイレは修理中の張り紙、急いでいる時に羊の群れで道路遮断などなど、いざという時ほどこの「ご不便君」は顔を現せる。
今回も僕と彼女は落ち着いていた。倉庫内にある「臨時貯水タンク」の蛇口をひねり、熱々のシャワーを浴びて気分爽快。その時はまだ、明日になったら直っているだろう、くらいにしか思っていなかったのだ。眠りから覚めれば消えてなくなる悪夢のように・・・。
2日目 6:30 まだ水が出ず・・・
所用があって早めに起きた。あ、水が出ない。タンクの水は使い切ったらしくカラカラ。早朝から出かけなければいけない時に限って、この有様だ。仕方なく残り少ないミネラルウォーターで顔と歯を洗って外出する。水節約で髪は寝癖が付いたままだ。
2日目 10:30 まだ水が出ず・・・汗
用事が済んで彼女に確認したらまだ水が出ないそうだ。近所の数世帯も渇水状態であることを知る。帰りに最寄りのスーパーでミネラルウォーターを6本買ってきた。ちなみに1.5リットル6本で2.7ユーロ(300円)。この時はまだ「今日中には復旧するだろう」くらいに思っていた。。。その時の僕に伝えたい「おまえの所見はぬるま湯のようだよ」と。
2日目19 Jan. 15:00 隣のおっさんぶち切れる
隣に住むおっさんがぶち切れた。森羅万象、すべての物事に対して怒りをぶつけ始めた。僕も彼に捕まり「断水報告センター 800.314.314」に電話するように怒鳴り散らされた。みんなで抗議すれば工事が迅速に進む、というのが彼の戦略のようである。わかった。わかったから僕の顔に唾しぶきを浴びせないでくれ。
2日目 20:00 レンジャー部隊到着!
断水から20時間以上経って、ようやく作業車とともに作業員数名が到着した。ロックな音楽が鳴り響き、夕日を背景に5人のヒーローがゆっくりと近づいてくるのだ。しかしすでに夜の8時。一見無作為に石畳を掘り返して、ここで作業終了。蛍の光をBGMに彼らは静かに退散する。
3日目 8:00 気合いを入れて作業開始か・・・
働くイタリア人の朝は意外ときっちりしている。8時に作業開始で、嫌がらせかのような爆音と振動を響かせながら石畳を掘り返していく。時々聴診器のようなもので水漏れ箇所を調べている。「やっぱり彼らは本物だ!!!」と思ったのもつかの間、12時に全員退散、お昼休憩のようだ。ヒーローとて不死身ではない、体力回復は必要だろう。だがほんとうに昼休憩に3時間も必要なのか。。。
3日目 15:00 我らのアントニオ登場!
パニーノをしっかり食べて、食後のカフェを満喫したヒーロー達が、また夕日を背に戻ってきた。ありがとう、フィレンツェ・ファイブ!僕のお気に入りは黒髪を後ろで結んだアントニオ・バンデラス風の若者だ。彼にだったら抱かれても良い、がんばれアントニオ!
3日目 16:00 やればできるイタリア人
フィレンツェ・ファイブは黙々と働いている。毎回思うのだが、イタリア人はやればできるのだ、ただ「やり始めない」のが問題なのである。僕のお気に入りアントニオも汗を袖口でぬぐいながら、懸命に働いている。頭上から眺める僕のために働いているのだ。差し入れに「いなり寿司」を持っていこうと思ったがやめておいた。
3日目17:00 ついに復旧、そして拍手喝采!
そうこうするうちに原因部分を発見。古い管を手早く交換していく。すごいぞ、トマーゾ!(←勝手に名付けたアントニオの上司)真新しい青い管を通した瞬間、我が家の蛇口から澄み切った清らかな市長の水*が、、、、バンザーイ!
工事の人たちも階下から「水出たか?やったな!ビバ!!!」の拍手喝采だよ。楽しいよイタリア!
こうして40時間を超える断水ストーリーは幕を閉じた。実は4日目の今も、家の前では掘り起こした穴を必死に埋め直しています。
イタリアは困ったことが多発しますが、それへの耐性ができないと生きていけないと再認識しましたヨ。怒ったら負けの世界、でも怒らなきゃ動かない、なんともさじ加減の難しい世界ですねぇ。ハイ。
* 市長の水・・・イタリアでは日本より早く郵政民営化され、水も民間企業が握ると言われています。おそらくそんな時に登場した言葉が「Acqua di Sindaco = 市長の水」。高いペットボトルのミネラルウォーターでなく、蛇口から出る水のことを風刺的に表現した言葉です。バールでも「市長の水でいいよ」なんて言って、蛇口の水をもらったりします。最低料金で生命の源である水が手に入るのは、当然のことながら、ほんとうに大切ですね。
* とうぜんトイレの水も流れませんので、知り合いのホテルでお借りました。復旧があと5時間遅かったらシャワーも借りようと思っていたところです。
* 最終的にペットボトルは18本買いましたよ。ただし使ったのは8本です。
【2012年1月21日 堂 剛 - Tsuyoshi Doh】(写真:フィレンツェの我が家の窓から)
いつも楽しみに拝見しております。
ですが、失礼ながら笑いながら読んでしまい、いなり寿司のあたりがツボでした。
私も不運を楽しめる?様にならなきゃデスね。
日本でイタリア式に頑張ります!
断水大変でしたねぇ(´Д` )イタリアの人って面白いな…って他人事みたいにスイマセンσ(^_^;)
逆に自分の地域が断水になっても、そんな感じなのかな〜。アントニオナイス☆彡でも…気ぐ長くなるかもo(^▽^)o
さすがに二日目の夜は心配になりました。やはりトイレがきついですね。水の大切さをしみじみ感じました。
> 真紀子さん
イタリアの人は別に面白くないですよ。イタリアに住む僕が面白いのです!hahaha
初コメです。
本当にたいへんでしたね!
でもいつもながら、ユーモアを交えて文章にできるツヨシさんて、本当にすごい!と思ってしまいます。
私は、以前に日本で断水になり、泣きそうになりました。(バブル崩壊直後にできたマンションで、建築業者の手抜き工事、建築費用持ち逃げ?物件と後に判明しましたが)
その時は夜遅くに管理会社にTel。翌朝出社前に来てもらいましたが、もちろんペットボトルを購入。でも、一番たいへんだったのはトイレでした。。二度と経験したくないと思ったことでしたが。
ですので40時間なんて、私だったら発狂してしまいそうです。
でも長く住むと慣れ?ってあるのかな?
私は、多分ツヨシさんが最初にイタリアに留学してた時期に、マルタ共和国という国に留学してましたが、地中海タイム?や、おそらくイタリア以上のいいかげんさみたいなものにかなりやられてました。
なので、そういう中で生活を楽しめるって、すごく素敵だなって思います。ツヨシさんのユーモアさみたいなもの、すごくうらやましく思いました!
やはりマルタもだいぶ「おっとり」しているのですね。でもイタリアよりは勤勉かと思っていました。こういうリズムの違う世界に住んでいるとやっぱり徐々に体と心が慣れてくるんだと思います。笑わなきゃやってられない、ってのが本心なんでしょうね(笑)。
ローマ帝国の水道技術はどこへ行ってしまったのでしょうか?
何か起こるとたいへんそう、イタリ〜(^^)
小生も感覚的にTsuyoshiさんと同じです(笑)
あ、以前ゴミ収集が遅れて大変な事になってる記事をみました。そちらではいかがでした?
千葉市川の江戸川ウォークマン治郎右衛門でした。。。
ナポリのゴミ問題は相変わらず変化ないと思います。埋め立て地が不足しているのと、焼却施設が様々な要因で新たに建設できないのが原因です。経済状況が悪化している今、好転に向かうのは難しいでしょうね。。。