去年(2007年)のメーデーにフィレンツェで行われたプレカリアート反対のデモ行進。子供や犬まで混じってのどかで平和なアピールです。
先日、日本のサイトを見ていて「プレカリアート」という文字を見つけました。イタリア語のプレカリアート(precariato)という言葉は「非常勤」や「パートタイム」という意味です。日本では、フリーター、契約社員、派遣社員(=非正規雇用)などともいいますね。
日本では今、フリーターは200万人を超えて、パートや派遣、契約を含む非正規雇用者は1500万人に達するそうです。若年層労働者では5割近くが非正規雇用というデータもあります。20代、30代が多いフリーターの平均年収は100万円代とのこと・・・。非正規雇用の増加は様々な問題をも引き起こします。例えば所得格差の拡大、それによる結婚や出産の減少、高等教育が受けられない層の増加などなど。。。
ヨーロッパでも日本同様に、戦後、雇用機会を増やすために非正規雇用が広まったのですが、今は正社員と非正社員の均等待遇が進んでいます。昨年、フランスでもプレカリアート反対の大きなデモが行われたし、イタリアはかなり遅れ気味ですが各地で反対運動が起こっています。ちょうどイタリアの新聞でも下記の記事を見つけました。
2007年の失業率は6.1%。ここ15年でも最も低い数値。
南イタリアの失業率も下がり、女性の仕事進出も過去最高。
南イタリアの失業率も下がり、女性の仕事進出も過去最高。
イタリアと日本の失業率をグラフにしてみました。こうやって見ると分かりやすいです。
新聞によると失業率は減少したけど、非正規労働は減っておらず、アンケート対象者の45%は心配事の一番に「仕事」を挙げたと伝えています。実際、失業率の低下は高齢化社会による求職者が減ったという要因が大きいでしょう。。。
また南イタリアの失業率は減少はしたけど、それでも平均のほぼ倍にあたる11%、24歳以下の失業率も20.1%、南イタリアの若者に至れば実に32.3%の失業率となるそうです。
女性の失業率も昨年から0.9ポイント減少して7.9%だそうですが、若い女性となると23.3%に達します。
不安定な生活は不安定な精神状態を生み出しますし、低賃金の過酷な労働は生きる意欲を削いでいきます・・・。
ある日のニュースでは、今イタリアでもめている「アリタリア航空」の身売り問題を取り上げていたのですが、空港内で働く職員(チェックインカウンターなど)のほとんどが非正規雇用=パートタイムなんだそうです。しかも時給は8ユーロ(約1,250円)・・・。唖然とします。
緑のジャケットを着て空港内を颯爽と歩いていますが、かれらは月給15万円程度のプレカリアートです。
今回の失業率の低下には移民が大きく貢献しているといいます。外国移民労働者の増加により就業者総数が増加して失業率が下がったのです。
根本的な問題は、イタリアに技術力を必要とする産業がない(少ない)ことかな、と思います。イタリアは日本と比べるとサービス業の比率が高いでしょうから(調べた訳ではないです)、雇用はなかなか安定・拡大しないと思います。
もちろん革新的な経済政策を打ち出せないのも大きな原因ですよね。
日本でも”ワーキングプア”という問題が深刻化していますが、
その一端にやはり非正規雇用者の増加が関係しています。
非正規雇用者増加の背景には、
長引く景気停滞や終身雇用制度の崩壊など日本特有の事例もあると思いますが、
抜本的な経済政策を打ち出さないと解決できないのはイタリアも日本も同様でしょう。
つよしさんも指摘していた非正規雇用者増加が生み出す問題は、
新たな非正規雇用者を生み出すスパイラルの一因になりかねませんよね。
低所得者層を「資本主義社会」「自己責任」という名の下に切り捨ててしまう論調もありますが、
その結果が国力の低下につながっていくのではないかと私は思います。
フランスなど、そういう意味でも先進国の政策がますます興味深くなりますね。
イタリアではこの問題の扱いは大きいのでしょうか?
イタリアは貧富の差が日本と比べて昔から大きいです。ただここ数年でワーキングプアの若者が増えているといいます。低所得者の保護は日本よりはあついですが、まだまだでしょう。本当の貧困層を抱えたことのない日本はきっとこれから大変だと思います・・・。さらに日本人はイタリア人と比べると個人主義社会なので、その点も状況を悪化させると思っています。
> AKIさんへ
映っていたのは僕がお手伝いしている語学学校です。僕の家はADSLがないので、オフィスを貸してもらいました。
なるほど。まさにその通りだと思います。
一昨日の朝日新聞に、ドイツの働く貧困層への支援策が一定の効果をあげている、という記事がありました。
就労から福祉分野まで多様な支援策がきめ細かに用意され、一つの窓口で利用できること、
また、就労後も生活が軌道に乗るまで現金給付をして支援を続けること、
外国人の為のドイツ語講座などの能力開発プログラムの実践など、
困難を抱えた人たちを労働市場に戻すことに成功している、という内容でした。
日本でも雇用保険というシステムがありますが、受給には一定の条件があり、
正直ハードルが高い一面があります。
その中には職業訓練プログラムもありますが、こちらも同様です。
個人的には、受講しやすいPC(特にインターネット)プログラムを増やし、情報格差の境を低くすることが、様々な格差社会の突破口につながるのでは?と思うのですが・・・。
日本の失業率は、雇用保険受給者の数だけカウントしていて、本当の失業率は20lを超えているのではないか?という意見があるみたいですが、、どうでしょうか??