
ボマルツォの怪物庭園「Parco dei Mostri」。名前からして大仰なその庭園は中部イタリア、ヴィテルボ県のボマルツォ村にひっそりと隠されている。
このイタリアにあって秘境のような庭は、澁澤龍彦によって日本に伝えられたと言える。博識でヨーロッパに造詣が深い澁澤氏にとってもこの怪物庭園は随分とお気に入りだったようで、興味のある人は一度「ヨーロッパの乳房

その昔は噴水だったと思われるペガサス像
この奇っ怪な庭園はローマ地方の有力貴族オルシーニ家が作った由緒正しいもので、しかもティボリの「エステ荘」で有名な建築家ピッロ・リゴーリオの作品と聞くと誰もが驚いてしまう。なぜ教皇まで出した名家が片田舎にこんな酔狂な庭園を造ったのか・・・

「傾いた家」は招待客や友人を驚かすために作られたとか。中にはいると数分後には目眩がしてくる
怪物庭園の誕生には色々な説があるようだが、16世紀、最愛の妻を亡くしたオルシーニ家の息子が、その悲しみから逃れるために作らせたとも言われている。たしかに庭園の中には摩訶不思議な彫像が多いのだが、瞑想に使われたといわれる密室などもあって少し痛々しくも感じるのだ。

庭園で最も有名なのがこの「人食い鬼」。口の中にはテーブルとベンチがあって瞑想の個室のようだ
その後、時代の流れとともに庭園は忘れられ、そして20世紀に再発見される。なんとも歴史まで奇妙だ。村を挙げて復旧に務め、現在の形となったのは戦後のことで、実に400年ぶりの復活劇だ。

庭園内は母なる自然に柔らかく包まれている感じがする
かなり不便なところにある庭園だが、レンタカーでも借りてじっくりと訪れてみたい。ピクニックができる場所もあるので、ランチボックスを持ってちょっと早めに出かけるのが良いだろう。いかにもイタリアらしいのだが、この庭園の公式閉館時間は「日没」である。
【2010年10月20日 堂 剛 - Tsuyoshi Doh】(写真:ボマルツォの怪物公園)